40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文23-19:ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(感想文22-20)の続編。こちらも1を貸してくれた会社の本好きの方からお借りして読んだ。

今作も中学生の息子さんを軸に話が展開していくのだけれど、1よりもちょっと親(著者)との距離ができた感がする。これも息子さんの成長だろう。

そして成長し、大人へと近づくにつれて、現実の問題がよりリアルに迫力をもって描かれている。

保守党政権は、2010年に緊縮財政を始めてから、失業者たちに「スタートアップ」することを勧めている。彼らを雇ってくれる会社がなくとも、自営業者になってくれれば、失業保険や生活保護を払わずにすむからだ。(84)

「ASBO」とは、「Anti-Social Behavior Order(反社会的行動禁止命令)」の略称だ。ブレア政権時代に制定された、放火、破壊行為、暴動、ドラッグ・ディーリング、窃盗などの反社会的行動を取り締まる命令のことである。(148)

今のリアルな一般庶民のイギリスの様子を日本語で読めるのは大変貴重だ。海外で子育てする母親のプライベートな苦労話だけではなく、イギリスの政治の問題が複雑に絡んでいる。

「自分みたいになるな」と言う大人たちが住む街を、息子はどんな目で眺めながら育ってきたのだろう。(130-131)

この文章がイギリスの庶民のリアルを集約している。親が自らを卑下し、反面教師として学べと子に諭す。なかなかキツイ。社会が停滞し、抜け出す道筋は見えず、希望を持てない。

私はイギリスのリアルを知らない。本書を読んで知った気になるつもりもない。海外だとこんなに日本よりも進んでいるよとか、海外ではこれが常識なのに日本はまだまだだとか、海外に行って日本のこういう素晴らしさに気づいたとか、そういった言説はSNSでたくさん見受けられる。

しかし本書は庶民的な生活の質を何とか維持しようとしている一般家庭のノンフィクションエッセイであり、そういった言説はこれまで見たことがなく、繰り返すが大変貴重である。

似た本だとプリズンガール(感想文08-55)を思い出す。これはこれでリアルだけれど、ちょっとシチュエーションが特殊ではある(15年も前に読んだ本のタイトルが出て来るのって感想文書いてたからではあるけれど、すごいね)。

うちの長男は高校1年生になった。幼時から始めたサッカーを辞め、バスケに転向。それなりに楽しそうにはしている。普段、私が家にいないので生活の様子はわからないが、ちゃんと勉強をしている感じはしない。

人生はままならない。半世紀近く生きた私の暫定的な人生についての結論である。だからこそ、常に考え、周辺状況を把握し、できる限りの準備をする。

歳のせいか、最近、人生について考えるようになった。ままならない人生をコントロールしようとするのは不遜であり、謙虚に生きようと考えている。これが老いというやつか。

人生を振り返るといくつかの分岐点があったかもしれないが、全てに正しい選択をしてきたかどうかはわからない。でも後悔はほとんどない。

あと10年ちょっとで子供たちは巣立っていくだろう(そうあって欲しい)。そうなったときに、妻と二人でどういう生活をしようか。バスケ以外に趣味と呼べるものはない。自転車、料理、釣り。この方向で何か広げていくのだろうか。

人生はままならない。生きていく限りは周りの人に少しでもいい影響を与えていきたい。悩んでいるような、出口のない悩みをただ抱えているだけのような、しがない中年男性(単身赴任中)は老いつつある体と心と折り合いをつけるために、日々困惑し、懊悩し、抗っている。