40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文13-65:「幸せ」の経済学

f:id:sky-and-heart:20200215190119j:plain

※2013年10月28日のYahoo!ブログを再掲。

 

↓↓↓

スポーツの世界は学歴社会(感想文13-48)に続く橘木さんの経済学に関する本。今度のテーマは「幸せ」。経済学は人々を幸せにすることを目的にした学問だと思っているので、興味深い。改めて幸せとは何かを考えさせられる。

私が習ったミクロ経済学では、価値と価格は異なり、その差額分が効用であり、幸せになると教わったという理解だ(たぶん)。500円の価値があると思ったビールを300円で飲めたら、200円分ハッピーになる。これが極めて単純だけれど、重要な経済学の理解への第一歩だと思っている。

本書は(中略)人びとの「幸せ」は必ずしも消費の最大化、あるいは所得の最大化だけでは得られるものではない、ということを主張するものです。

ふむ。いきなり習ったことと違う。しかしながら、こういう主張も分からなくはない。いっぱい消費(買い物)できて、いっぱい所得があれば(金持ちならば)幸せかというと、そうではない。消費と所得以外の要素もたくさん幸せに関与しているだろう。

本書では、様々な条件を調べ、どういう人が幸せを感じているか調べている。また幸福度が高いと言われているブータンデンマークの事例も示されていて、幅広く書かれている。

意外な発見でしたが、既婚者は幸福です。さらに子どもがいない夫婦の方が幸福度が高いのです。

へぇ。既婚者は幸福なのか。しかも、子どもがいない夫婦の方が幸福度が高いのか。夫婦格差社会(感想文13-31)にも通じている。うちは子どもがいることで幸せを感じているけれど、確かに子どもがいることで苦労することもあるし、子どもの急な病気で会社を休まないといけないこともあって、大変なことはある。子どもがいない夫婦の方が幸せであるので、こうして少子化が社会問題となっているのだろう。子どもがいる夫婦も同じくらい幸せと実感できる世の中になると良いのに。

企業規模に関して私がショックを受けたのは、公務員の幸福度が高いことです。日本社会というのは、やはり公務員が一番恵まれているということの証左でしょうか。

これだけ自由主義経済になっていると思われる日本でも公務員が恵まれているのかもしれない。どうだろうなぁ。公務員も確かに幸せなのかもしれないけれど、企業にいると比較的幸福度が低いっていうのは、どちらかというと企業に問題があるようにも思える。いわゆるブラックな会社が多いのかなぁ。あるいは、仕事と幸せが直結するような社会にはなっていないのかもしれない。

ここからは気になる箇所(特に数字)を挙げていこう。

四割の大学生が東京圏にいるという事実は、他の先進諸国の首都に比べてきわめて高い数値です。

へぇ。知らなかった。そんなに東京圏に学生がいるんだ。そりゃあ、東京は活気があるね。関西からこっちにくるとこんなに大学があるんだとびっくりする。ほとんど知らないんだけれど。

デンマークは)2008年度において国民所得に占める税と社会保険料の国民負担率は、69.9%と世界の中で最高のグループの負担となっています。

所得の7割が税と社会保険料になっている。結構、驚きだ。ちなみに日本は40.6%とのこと。これでも高いと感じるけれど、世界的に見れば40%というのは高い数字ではない。そういえば、スイスでベーシックインカムについて国民投票されるというニュースがあった。高い負担率とベーシックインカムの合わせ技は、合理的な政策なのかもしれない。

デンマークの経済の強さを見るとき、忘れてはならないことがあります。それはデンマーク女性の働く率が高いということです。現代では男性の79%、女性が74%なので、(中略)育児休暇中の女性を除いて、既婚・未婚の女性のほとんどが就労しているのです。

これも面白いデータだ。デンマークではほとんどの女性が働いている。専業主婦みたいな人種はほとんどいないのだろう。皆さんどういう仕事をされているんだろうか。お互いに働いているという状況は、デンマークの夫婦は画一的なのかもしれない。

2010年におけるブータン国民の幸福度調査では、人びとのうち41%しか「幸せ」とは回答していません。(中略)家族の絆を中心にした貧乏生活だけでは幸福を感じることができない、とブータン国民が思い始めたのです。

ブータンといえば幸せの国の代名詞だ。しかし、最新の調査ではすっかり幸せと感じる国民の割合が大幅に低下してしまっている。ブータンは幸せの国ではなかったのだ。他の国の状況を知って、魔法が解けてしまったのだろう。知らないことは時には幸せなのかもしれない。でも、知らない状況はずっと続くというわけではない。

日本国民の「幸せ」度は、世界各国の人びとと比較すれば中間の位置にいることがわかりました。

ふむ。秀逸で有名なコピペを思い出す。

Q.日本人は物事を白黒つけるのが下手だと思いますか?

・思う 21%

・思わない 7%

・どちらともいえない 72%

これに似ているのかもしれない。きっと自分が幸せかどうか、多くの人はどちらとも言えないという、あやふやな状態にあるだろう。そしてそういう状況に安心するのではないだろうか。

私は、自分のことは幸せだと思うけどね。今のところ。

↑↑↑

 

(感想文の感想など)

最新の世界幸福度報告(World Happiness Report 2019 *英語)によると、日本の幸福度ランキングは156カ国中58位(Figure 2.7: Ranking of Happiness 2016-2018)。10年くらい前から幸福になったかどうかでは、幸福レベルが-0.215で132カ国中95位(Figure 2.8: Changes in Happiness from 2005-2008 to 2016-2018)。

日本は世界全体でそこまで幸せな国ではないし、10年前からは劣化しているという結果。

ちなみに幸福度1位はフィンランド。2017年11月にフィンランドに行ったけれど、まあ寒い国だった。寒いためか、他の欧州諸国に比べて、ホームレスの姿は少なかった。人びとは暖かく、優しく、また行きたいなと思える国だった。

何が違うんだろうね。