40代ロスジェネの明るいブログ

2020年1月11日からリスタート

感想文18-13:分子レベルで見た触媒の働き

f:id:sky-and-heart:20200405103651j:plain

※2018年5月9のYahoo!ブログを再掲。

 

↓↓↓

この4月でついに異動(お役御免)となり、新しい部署で働き出した。ケミストリー関連について勉強する必要があり、まずは全く理解の及んでいない触媒について学んでみようということで、手にとったのが本書だ。

触媒とは、『化学反応の際に、それ自身は変化せず、他の物質の反応速度に影響する働きをする物質。』とある。例えば、『水素と酸素から水が生成する反応 H2 + 1/2 O2 → H2O の場合、水素と酸素の混合ガスをガラス容器に入れ200℃に加熱しても何の反応も起こらない。しかし、混合ガスに少量の銅(Cu)を入れて加熱すると、水素と酸素は速やかに反応して水を生成する。反応後、加えた銅には何の変化も起こっていない。』(触媒学会 触媒とは参照)ということになる。

色々と解説があるものの、不思議でならない。ほんの少し触媒を入れるだけで、普通には起きにくい反応が、速やかに進む。

最も有名な触媒反応といえば、ハーバー・ボッシュ法だ。私の理解でざくっと書くが、植物の生育に窒素が必要である。そして空気中には大量の窒素(N2)が含まれている。しかし、気体の窒素を植物はそのまま吸収することはできない。糞尿を肥料として利用したように窒素(N2)をアンモニアNH3)に変えることができれば、肥料になる。だが、窒素(N2)の三重結合を外すのは非常に難しく、多くの研究者が挑戦していた。それを達成したのがハーバー・ボッシュ法だ。

オストヴァルト、ルシャトリエ、ネルンストと、当時では勃興期にあった物理化学という新しい学問分野を開拓し確立した錚々たる研究者が、この問題に挑戦していたのである。このことからも、アンモニア合成がいかに重要で必要性にかられていたかが理解できる。(p.20

教科書に出てくる偉大な研究者もアンモニア合成に挑戦していたとは知らなかった。毒ガス開発の父ハーバー(感想文14-14)を読んだように、発明者であるハーバーのことばかり着目してきたからだ。

余談だが、大きな発明や発見には人類にとって良い面と悪い面が常につきまとう。アンモニア合成もその例外ではない。窒素化合物は肥料だけでなく爆薬製造にも欠かせない原料なのである。ドイツは第一次世界大戦中に会場を封鎖され、海外からの資源が入ってこなくなったが、このアンモニア合成のおかげで爆薬の原材料は輸入に頼ることなく製造しつづけることができた。これが大戦を長引かせた一因だとも考えられている。(p.27

アンモニア合成によって、農作物の生産性が飛躍的に向上し、多くの人類を養うことができるようになった。と同時に、多くの爆薬が作られ、多くの人類の命を奪い取った。命を救い、命を奪う。この全く相反する事象に偉大な発見・発明は貢献する、っていうかしてしまう。因果なものだ。

私は高校化学を履修し、大学でも生化学を履修したにも関わらず、残念ながら、本書の内容についてはおそらく20%も理解できなかった。しかし、一つ大きなことを知った。それが触媒化学と表面科学の関係性である。

物質の諸性質を考える際、物質が気体、固体、液体などの均一相にある状態を扱うのが普通であった頃に、このラングミュアの研究は、物質の表面というものに注目し、また、表面がこれらのどの相にもない重要な役割を果たすことを示した研究である。(p.47

これまで不思議だったのだ。なぜ表面科学という学問が存在するのか、またなぜそれが重要な学問分野とされているのか。本書でようやく分かったのだ。触媒化学を突き詰めていくと、表面に注目するという大きな視点の転換が重要となり、そして表面でいったい何が起きているか、表面に注目するからこそ捉えられる吸着や離脱という現象のことを。

触媒化学の面白さが分かってきたような気がする。しかし、これまた途方もなく難易度の高い領域であるということも分かってきた。原子、分子、電子、光、これらのことへの根本的な理解を進めないことには、触媒化学の本質はつかめないだろう。もうちょっと勉強してみたい。

↑↑↑

 

(感想文の感想など)

触媒のことは今でもちゃんと理解できていない。